オタク・ログ

オタクが観たものの感想や備忘録などを書きます。

【感想と考察】秒速5センチメートル観ました

今更だけど、新海誠監督の連作短編アニメーション映画の秒速5センチメートルを観ました。

ネタバレありの感想を書きます。考察もあるけど、まあそこまでなんも考えてないです。

 

2007年公開だったそうなので、もう10年以上前の作品。

実は2011年くらいにDVDを友人から借りて観たことがあったと思うんだけど、全く記憶にないんですよね。もしかしたら、そのときは全く興味がなかったので流し見したのかな。

大人になってから観るべきだったというか、色んなことを経験してきた今だからこそ観て方がよかったのかなと感じました。私にとってベストタイミングだったなと思いました。

まあなぜ今更になって観たのかというと、推しがオススメしていたからですね。

推しは経済を回す。

 

感想

第一話・桜花抄

初恋の話かよ、あまずっぺ~な。

実は新海作品は全く観たことがないです。

君の名は。」や「天気の子」はテレビの特集や映画のプロモーションで一部観たことがありましたが…(推しが出てない作品はあんまり観ないオタク)

そのときにも思っていましたが、風景・背景描写がとにかく美しいですね。

桜の花びらがはらはらと舞い落ちる光景が美しい。

実際に自分が桜が舞い落ちる道を歩いていても、こんなに心打たれることはないのにね。

 

中学生になって離れ離れになってしまった二人が携帯電話を持たずに手紙だけでやり取りしている様子を見るに時代を感じますね。

 

自分のことを思い返すと、小中学生時代に転校生はいたものの、学校が離れ離れになっても連絡をとるようなことはありませんでした。そこまで仲良しだったわけでもないからかな。

それはクラス替えでクラスが離れてしまった仲良しの子と段々と話さなくなってしまったのと同じ感覚だったなあと今になって思います。

やることが山のようにあるし、日々は過ぎ去っていくし……会おうと思えば会えるでしょ、と思っていたような気もします。

私自身が転校することは一度もなかったけど、転校する人の気持ちはどんなもんだったんだろうなあ。

 

作品に話を戻すと、東京と栃木と離れ離れになってしまった二人は手紙でやり取りをして、彼女の最寄り駅である岩舟駅で19時に待ち合わせして会うことになります。

本編中で一番楽しかったのはここ。

なぜなら、東京ー栃木間をローカル線で移動したことがあるからです。

 

また話が脱線するけど、地方民にとっては、全国ネットのテレビ番組で紹介される東京のグルメランキングやオススメの店なんてのは非実在の世界の話だと思うんですね。

おいしそうだなあとか行ってみたいなあなんて思っても、行けるわけないんですよね。特に子どものときは。

今はフッ軽で東京も何度も通っているので東京は実在しているって知ってます。

仕事の都合で1カ月だけ宇都宮に住んでいて、その間に何度もローカル線で東京に通っていたので、乗り換えの駅や通り過ぎる駅の名前に「あ~あそこ!通ったわ」と懐かしい気持ちになりました。(想定されている楽しみ方と絶対に違う)

 

岩舟駅へ電車で向かう貴樹貴樹はまさかの大雪に見舞われて約束の時間になってもまだ電車の中。

明里に連絡する手段がないというのがつらいですね。

今だったらスマホですぐに「電車が遅れているからもう今日は家に帰って」と連絡できるのに。

乗換の駅で彼女が待つ岩舟駅の駅舎に電話をかけてもらえるように頼めるかもしれないのに、とか思ってしまうけど、13歳が県を跨いで一人で移動するというそもそも難易度の高いことをやっている上にとんでもないアクシデントが起こっているんですよね。

とんでもない絶望感に襲われているんだろうな。

諦めて引き返して家に帰って日を改めることもできるのに、それでも岩舟駅に向かうのは強いのか、それとももうそれしか選択肢が彼の頭の中にないからなのか。

約束の時間を大幅に超えて駅に辿り着いて明里が待ってくれていたとき、どんなにうれしかったでしょうね。

駅舎の中のストーブの暖かさが画面越しに伝わってくるような気がしました。

雪がしんしんと降る様子のこれまた美しいこと…

どうやったらこんなに美しい絵を描けるんだろうなあ。

 

第一話はドバドバ泣いてしまったんだけど、作品の美しさに心を打たれたというしかない。

 

第二話・コスモナウト

第二話でおもしろかったのは、第一話の描写が出てくるところ。

「今日、遠野くんに告白するんだ」と意気込んで鏡を覗く花苗が、第一話で乗り換えの駅で「明里に会うんだ」と鏡を見る貴樹と重なっていたのが、意気込む二人の感情を時を超えて重ね合わせていておもしろいなと思いました。

同時に、そういった情熱に近い感情が高校生になった貴樹にはなくなったんだろうなあと全て観終わった後に感じました。

第二話では貴樹が携帯電話でメールを打っている描写が多く、花苗もそういう場面を多く見かけているとモノローグで言っている。

明里とメールしているんだろうなあと思っていたけれど、メールアドレス欄は無記入、せっかく打った文は破棄、なんだか不穏な様子がその描写から伝わってきます。

 

それにしても、花苗に対する貴樹、優男すぎんか????

高校生で「会えて嬉しいよ」みたいな台詞言える???好きでもない子(本人は親しい友人と思っていそうだけど)にこんな台詞言わんわ……久しぶりに会う友達ならまだしも…もしかしてパンピは当たり前ですか…

そして、花苗の原チャが故障したので二人で歩いて帰ることに。

貴樹の家が花苗の家より遠いのはいつも花苗の家に着いた後に貴樹を見送っている様子からわかるし、そもそも高校生が原チャで学校通っている時点で学校から家が遠いのがわかるのに、置いて帰らずに一緒に歩いて帰るって何事???

田舎で人通りも少ないから女子高生が夜に一人で歩いて帰るのが危ないのはわかるけど、そこまで気が回る高校生すごすぎる。

私が貴樹だったら、一人で帰るから大丈夫って言われたら「そう?気を付けてね。じゃあまあ明日~」って言って原チャ乗って帰るわ。(クズ)

それなのに危ないから、とかじゃなくて歩きたい気分だったからって言ってあまり気を遣わせずに一緒に歩いて帰るのを選択するとか、そりゃ「これワンチャンあるわ」って思うよ。

 

貴樹は途方もなく遠いところを見ている(高校生にとっては絶望的に遠い距離の先にいる明里を見ている)という比喩のために、種子島に引っ越させ、ロケットを打ち上げたのか?

とてもおもしろい描写だと思いました。

 

それから第二話に出てきた、高台から見える夕方の空の景色が自分の見たことのある風景と重なってなんだか懐かしくなりました。

実家の近くに街を一望できる高台があるんですが、そこも西向きの空が見えるので夕暮れ時によく行っていました。遠くの空は沈む夕日の色でオレンジ色に染まるけど、頭上の空はもう夜の色をしていて、グラデーションが綺麗であの景色を見るのが大好きでした。

ということをこの作品を観て思い出したんですけどね。

 

あと、ヨーグルッペが出てくるのが趣深いですね。

高校時代に学内の自動販売機におもしろ飲料たちと並んで販売されていたのを懐かしく思います。

秒速5センチメートルの上映後に全国販売になったとwikiで見たので、その影響なのか元々並んでいたのかはわかりません。

ちなみに私は飲んだことがほとんどないので青春の味ではない…(ジュース類を全く飲まなかったので自販機で飲み物を買ったことがほぼない)(それより売店のからあげを買っていた)

宮崎県出身の大学の友人が好んでヨーグルッペを買っていて、好きすぎてハンドルネームにまでしていたのも懐かしいですね。

 

第三話・秒速5センチメートル

そして第三話に突入。

事前情報(推しからの)でこの話が報われないのは知っていたのですが、直接的な台詞がなくても内容がわかる描写なのがすごい。

最初に、踏切で貴樹と明里らしき女性がすれ違う描写で、二人はすれ違って終わるのだなとわかってしまう…

その直後の、明里と両親の会話で「彼においしいものを作ってあげるんだよ」という台詞と、明里の「私も彼もまだ子どもだった」というモノローグで同じ”彼”という単語が出てきても指している人物は違う。

それでも、あえて人物名を出さずに”彼”という単語使うところがずるいなと思います。

と同時に、表現の仕方のおもしろさを感じます。

 

「悲しみが積もる」というワードのチョイスもおもしろいですね。

昔、二人で見た降り積もる雪景色には悲しみのようなものは感じず、それどころか暖かさのような軽やかさを感じたのに。(ヒート〇ックか?)

あと、この文章を書いているときに気付いたのですが、第一話と第三話(関東での話)ではほとんどの季節が桜の舞う季節か雪の降る季節なのに対し、種子島が舞台の第二話では夏なのが、栃木と種子島の断絶された距離を表しているような気がしました。

 

最初は整った部屋で仕事をしているのに、段々とゴミが散らかっていって貴樹の心もすり減っていっているのも伝わってきますね。

電車に乗る明里はおそらく学生の頃と変わらずに本を読んでいるけど、二人で過ごした大雪の日から彼女はとっくに変わってしまっている。

高校生の頃に読んだロケットの記事、会社を辞めた後にコンビニで読んだ記事から1999年に打ち上げられた「国際深宇宙探査衛星エリシュ」長い旅路の果てに太陽系外へたどり着いたことがわかる。(もしかして高校生のときに種子島から打ち上げられたあれ…?)

(いやでも、1999年に高校生だったらそのころに携帯電話はまだまだ普及していないような…)

世界も進んでいっているのに、貴樹だけがこの世界で進めていないようなそんな気がします。

すれ違った踏切で「今振り返れば、きっとあの人も振り返ると強く感じた」と言った通り、電車が通る寸前に彼女は振り返るような素振りを見せる。だけど電車が通り過ぎた後には彼女はいない。

貴樹と明里が精神的に似ていたと序盤で言っていた通り、昔二人の心は通っていたのかもしれないけど、今はもう違うんだと言われている気がしました。

最後に貴樹が少し笑って歩き出すのは、彼がこの世界で進みだせたということでしょうか。

 

あとさ~~~山崎まさよしの効果的な使い方!!!!!!!!ずるい

今回作品を観るまで「One more time, One more chance」を意識して聞いたことはなかったのですが、ええ曲やんけ…天才やな…

歌に合わせて景色がぱっぱっと移り変わっていくのにくいな…

One more time, One more chance」のリリースが1997年、「秒速5センチメートル」の上映が2007年と10年も違うのにこんなにマッチするのがどちらの作品もいつの時代にもある人の感情を表現しているからなんでしょうね。

 

終わり

観終わった後の気分としては、草原を通り抜けた柔らかい風が心を通り抜けたそんな感じです。(どんな感じ)

観てよかったなあ。

ありがとう推し。

他の新海作品も今度観てみようと思います。